譲渡益税とは、売却益が出れば徴収されるマイナス方向の出金。
その後に売却損が出れば、逆に還付されてプラス方向の入金となります。
含み資産の売却に伴って計算される税金ということですね。
では、何も売却していないのに、ある日ポロっと還付の入金があるというのは、どういう現象なのでしょうか?

売り注文をしなくても、実は売却されているもの
源泉徴収ありの特定口座は、譲渡益税の計算が自動(証券会社にお任せ)なので、普段はその金額について逐一考えたりはしません。しませんが、明らかに何の取引もしていないのに譲渡益税が戻ることはないはずです。つまり、資産はどこかで売却されています。
結論からいうと、投資法人の利益超過分配金の原資分がそれにあたりますね。
証券会社の譲渡益税明細画面をみると、こんな記載がありました。
資本剰余金配当 /みなし譲渡 |
-59 |
---|---|
譲渡益税還付金 | 13 |
ちょうど、今回の還付金額と一致します。
この「資本剰余金配当/みなし譲渡」というのが利益超過分配金の計算部分にあたりますが、Jリート・インフラファンドにおいては減価償却費の分配原資を意味しています。
→ 最初に購入代金が出てゆく
→ その後一定期間、「減価償却費」という経費を計上する
→ その費用はどこにも支払われず、手元に残る
→ いいよ! それも分配しちゃうよ!
という流れです。
ただ、その分配は事業の儲け(利益分配金)ではなく、出資金の一部を売却したという扱いになる(みなし譲渡)ため、分配金を貰ったら貰ったで、その金額に対する譲渡益が出たり、譲渡損が出たりするのですね。
→ 計算の結果、元の投資額の XX%が売却扱いになります
→ 現在時価の XX% にあたる金額は、YY円でした
→ あなたの出資額に対する XX% を計算すると、おや?
YY円より少なくて、損が出ていますね
→ 可哀想に! 還付するよ!
…いや、別に哀れまれてはいないのですが。
現在のJリートはともかく値下がりしているので、利益超過分配金の多くが譲渡損を伴ってしまうのです。とほほ…。
これが含み益のリートになると、逆に譲渡益になるので徴収がかかりますね。このへんは別のブログでも書いていました。
benzoin.hatenablog.comタコ足配当と利益超過分配の違い
こう書くと、
「すわ! だからリートはタコ足配当で危険なんだ! 止めとけ!」
という意見が出がちですが、減価償却費の分配はそういうものではないのです。
並べてみると、一見すると違いがないようにも見えますが。
- 投資信託のタコ足配当 …元本を売却して分配金にあてる
- リートの利益超過分配 …手残りのお金を分配する
何が違うかというと、前者は運用元本から得られる利益が当然に減少します。
正味の分配金は将来的に細ってゆくわけです。
後者は物件が減るわけではないため、そこから得られる利益(賃料)は減少しません。
あくまで、会計上の費用として計上され、実際は支出されなかった減価償却費を浮かせたままにせず、投資者に返すという処理なのですね。
そんなわけで、含み損リートからの入金は形的には譲渡損になるけれど、分配金も還付金も両方貰ってまぁいっか、という所でしょうか。
あーめんどくさい。

