年2回の株主優待を実施する東証プライムの不動産業、ファースト住建(8917)が、2023年10月から市場を移してスタンダード市場に移行するという開示がありました。
個人的には、無理しないのが一番と思うので、好意的に受け止めています。
多くの企業が、上場維持基準を満たさないまま「プライム」を選択した
東証の市場再編があったのは 2022年4月。
市場区分が下記のように再編され、あわせて上場維持基準も刷新されました。
再編前 | 東証1部、東証2部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロース |
---|---|
再編後 | プライム、スタンダード、グロース |
刷新後の最上位となるプライムの上場維持基準は、再編前の東証1部より厳しいです。
再編前は東証1部というトップ市場に居られた企業も、再編後はもっと厳しい基準を満たす必要が出たのですね。
赤い文字の部分が、東証1部より厳しくなった条件です。
プライム上場維持基準 | 東証1部→2部 指定替え基準 | |
---|---|---|
株主数 | 800人以上 | 2,000人以上 |
流通株式 | 流通株式数 2万単位以上 流通株式時価総額 100億円以上 流通株式比率 35%以上 |
流通株式数 1万単位以上 流通株式時価総額 10億円以上 |
売買代金 | 1日平均 0.2億円以上 | - |
純資産の額 | 正(プラスの額)であること | 正(プラスの額)であること |
プライムの上場維持基準が危ういところは、たいてい赤文字の流通株式時価総額か、流通株式比率が少ないようです。
ところが2022年4月の時点では、この基準に満たなくても「新市場区分の上場維持基準適合に向けた計画書」を提出すれば、経過措置としてプライム上場を選択できました。経過措置の期限は最長2026年までと相当長く、なんとなく提出したところも多かったのかも… という印象です。
2023年8月現在の経過措置適用企業は、プライム全体の 15.3% にあたる 281社だそうです。
ギリギリまで粘ることにより、プライムに残れる企業もあるとは思いますが…、
あまりに厳しい場合は、無理せず見合った市場にいたほうが健全じゃないかな。
ファースト住建が満たさなかった基準は「流通株式時価総額」
さきの開示 によれば、ファースト住建は「流通株式時価総額」以外の基準を満たしています。
流通株式時価総額のみ、100億円に対して現在約73億円と、惜しい感じではありました。
そしてどうやら、「上場維持基準を満たすためには労力やコストがかかっている」(同開示)らしいのです。
市場選択と株主優待は、たぶん関係ある
流通株式時価総額が上がるためには、まず株価の上昇が必要です。
株価の上昇はもちろん企業価値の向上に伴い実現するものですが…、
それはそれとして、言わずと知れた「株価上昇技」もありますね…。
株主優待の新設を決めた企業がもれなくそうなるように、株主優待は株価を上昇させます。
施策として実施される場合は、劇薬みたいなものでしょうか…。
そして、株主優待は企業にとってはコストそのものなわけなので、要するにお金をかけて株価を上げている、という言い方もできるわけで。
- プライムの維持基準を睨んで株価上昇させたい
→ 手段としての株主優待
という方針だった場合は、プライムを諦めたことで株主優待の動機が薄くなるとも考えられます。
果たして、年2回で品物ありというファースト住建にとっての株主優待は、「上場維持基準を満たすための労力やコスト」に入っているのでしょうか…?
これは今後の優待動向が気になります。
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