噂で売って、事実で買う。株式売買でよく聞く相場格言です。
しかし、その噂と事実が「行政処分」だった場合はどうなるでしょうか。
そんな事実が、金曜日の引け後に公開されました。
(以下、超抜粋)
1.勧告の事実関係
⑴ 不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけ
⑵ 不適切な不動産鑑定業者選定プロセス
2.行政処分の内容
⑴ 業務停止命令 (7月15日から 3ヵ月・所定の業務を停止)
⑵ 業務改善命令
上記で処分を出されたエスコンアセットマネジメントは、東証REITに上場している「エスコンジャパンリート投資法人」の運用会社です。
行政処分の勧告は事前に判明しており、対策が取られていただけに、業務停止命令という強い処分はショックだったのではないでしょうか。
私事ながら、自分は日本エスコンとエスコンジャパン投資法人の両方保有でして、今回のことで傷心退避したため、振り返りをかねてまとめてみました。
簡単な時系列
- 6月17日、証券取引等監視委員会がエスコンアセットマネジメントを調査しており、レッドカードとして金融庁に行政処分を勧告した
↓ - 同日、エスコンジャパンリートと日本エスコンの株価が下落
↓ - 同日夜、エスコンジャパンリートは組織変更などの対策を開示
↓ - 6月30日、日本エスコンが業績の上方修正を開示
7月4日、エスコンジャパンリートも分配金の上方修正を開示
↓ - 株価は回復基調
↓ - 金融庁からの行政処分がくだされる ←Now!
エスコン某ってのが一杯あって混乱するんだが…
ですよねー。
株式会社エスコンアセットマネジメントに行政処分が出されて、エスコンジャパンリート投資法人と株式会社日本エスコンが売られたって、はあ? という感じです。
自分も文字で説明できないので図にしてみました。
鑑定会社へ手を回し、親会社からの物件に鑑定結果を良くしていた、というNGのようです。
子会社独自の判断か、組織ぐるみの問題があったのかはわかりません。
親会社の日本エスコンも売られてニュースになったのは、後者への問題波及が嫌気されたと思われます。
行政処分の影響度
今回出された処分は2つ。- 業務停止命令
これは強い処分ですが、「店を閉めろ」というものではありません。
不動産の物件運用は普通に継続しつつ、下記に対して3ヵ月の停止です。- 新たな資産運用委託契約の締結禁止
- 不動産(不動産信託受益権を含む)の取得に係る運用指図禁止
つまり、今回の処分内容が改善されるまでは、物件取得プロセスを停止せよという趣旨に読めます。
- 業務改善命令
金融庁から出された処分の概略を再掲すると、
- 投資法人の投資主に今回の処分内容を十分説明する
- 法令等遵守に係る経営姿勢の明確化、内部管理体制の構築、業務運営方法の見直し
- 発生原因の究明、再発防止策の策定
- 経営陣を含めた責任の所在の明確化
- 対応状況を1ヵ月以内に書面で報告、および全てが完了するまでの間、随時書面で報告
最後の1項にプレッシャーがありますね。
やったふりはいかんぞというわけで、業務停止命令よりもこちらが主体であることがわかります。
報告状況や結果が宜しくない場合は、追加の処分もありえるぞと十分思わせる内容です。
投資法人・運用会社全体が兜の緒を締める問題
今回の例は、リートの投資法人とその運用会社、スポンサーがグループ会社で構成されており、そのなかで不透明な関係が指摘されて行政処分に至りました。
見渡すと、そのような関係を持つ投資法人は少なくないように思います。
金融庁の処分はこの点を重視し、業界全体に公正さを求めたのではないでしょうか。
エスコンジャパンリートは7月決算だけれど、どうする?
さて、自分は6月の勧告時点で日本エスコンとエスコンジャパンリートの両方保有がありましたが、勧告を知ったことで残念に思い、6月末頃売却していました。いわば「噂で売った」状態でしょうか。(涙)
では、現時点ではどうなるかというと、方向性は2択です。
どちらを選ぶのも投資主の判断で、自分は今のところ後者です。
今回の処分は、ペーパーカンパニー的な投資法人よりもむしろ、運用会社と親会社の日本エスコンに対して影響が大きいように思えます。
投資法人は最悪、運用会社が差し替わっても普通に継続してゆけるので…。
投資法人のエスコンジャパンリートは7月決算で、分配金の上方修正も出しています。
今回の処分は現在運用中の不動産に影響しないため、上方修正もそのまま維持されるでしょう。
そう思うと勿体ないですが、その一方で、これだけの大手が癒着の指摘とも取れる行政処分を受けているので、7月権利後の投資口価格が不安だったり、なによりやはり処分内容が残念だなぁということで割り切った面もありました。
感想
含み益で退避できていたらリスク回避の成功談でしたが、残念ながらそうはならず…。
多少値を戻した時点の売却だったとはいえ、NISA枠を失い更にマイナスというバッドエンドです。
ああもう。投資は怖いですねー。
個別株に対して指数ETFがあるように、Jリートでも指数ETFがあります。
個別の事件に巻き込まれることを避けるという意味では、ETFもまた良しであります。
今回は自分の保有投資口が痛手を被ってしまいました。
しかし、この勧告を出した証券取引等監視委員会と、処分を出した金融庁はグッジョブです。
公正なリート運用が成り立つよう監視がきくことで、リート全体への投資も守られるはずなので。