投資を続けていて感じるのは、「お金の用語が多いなぁ」ということ。
特に、資金調達・金策の領域に出てくる用語の多さ、複雑さは異常…。
しかも、年々増えてないか?
とウンザリしつつも、保有銘柄のキリンHDが何か技を出しそうだったので、この機会に少し勉強してみました。
- 「ソーシャルボンド発行のお知らせ」(キリンHD、2025年4月24日)
ソーシャルボンドは「用途限定社債」の一種
ボンド(bond)は英語で「債券」の意味。要するに社債です。
仕組みも発行方法も社債だけれど、用途限定という点だけが他と異なるのですね。
通常の社債は、目論見書で「手取金は○○に使用します」などと記載して投資家を募りますが、その使い道に拘束力はありません。最悪、資金の大半が異なる使途になっても裁量の範囲です。
これに対し、ソーシャルボンドの場合は社債の用途に拘束力があり、その用途は社会(ソーシャル)課題の解決に使われなくてはなりません。どのように使われたか、社会課題は解決したか、という報告や外部レビューも実施・公開することが求められます。
それが真摯であれば企業評価が上がって、より多くのESG投資を引き寄せる、かもしれません。
このような用途限定社債は、環境や社会課題、いわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)投資の領域で多く発行されます。
社債のラベル | 用途 |
---|---|
グリーンボンド | 環境改善(再生可能エネルギー、環境保護など) |
ブルーボンド | 海洋保護(水産資源、海洋汚染防止など) |
ソーシャルボンド | 社会課題解決(医療、教育、貧困対策など) |
サステナビリティボンド | グリーンとソーシャルの両方 |
などなど…。
この調子だとまだ新領域が生まれそうなので、ひとまとめに「ESG債」と総称されたりします。
これらは商品性の違いというよりは、価値観の共有に特徴がある社債と言えるでしょう。
キリンのソーシャルボンドは、何に使われる?
さて、話はキリンに戻ります。
今回、キリンHDの資金用途は「ファンケルの株式取得」でした。ファンケルのTOBは既に完了しているので、今回はその使途金を借り換える(または補填する)ということなのでしょう。
TOB資金がなんでESG? というと、ファンケルはヘルスサイエンス領域の事業を持っていて、この領域には社会課題の解決力がある、という解釈なのですね。
こじつk・・・いや、資金のやりくりには企業努力が欠かせません。
このソーシャルボンドの適格性について、キリンHDはまず「キリン・ソーシャルファイナンス・フレームワーク」を策定のうえ、各種ガイドラインや第三者評価をクリアしました。次はそのフレームワークに則って資金を調達し、プロジェクトを進めるという建て付けです。
www.kirinholdings.comつまり、ESGプロジェクトのためのTOBは、ESG適格投資。
「社会課題解決」は結構幅広く運用されますね。
個人的には、企業経済が関われる範囲の社会課題というのは眉唾でさえなければ、沢山あっても、幅広くても良いだろうと思っています。
企業はイメージ形成の一助に、投資家は自覚的な社会貢献に
ソーシャルボンドを含むESG債の利率は、それ以外の社債より少しだけ低く見えます。
自分は最初、「社会貢献なんだから、投資の利回りは低くて良い」という暗黙の了解でもあるかと思いましたが、その貢献内容はガチから微妙までのピンキリです。
色々見てゆくと、単純にこうなのかもしれません。
- ESGに資金調達する企業は、そもそも格付が高い
- ESG投資が普及したので買い手が多く、需要と供給の関係で利回りが低い
ESGはどちらかというと、意識の高い個人というより、もっと大きな法人や金融機関、保険業界などにアピールがある投資なのでしょう。
こういった企業は、「我々も、年間○○円(または○○%)の社会的責任投資を行っています」と計上するのが主な投資理由で、ついでに金利も戴けるのが副次的なメリットなので、社内的にも損が少ない運用が実現しそうです。何だかんだでニーズが噛み合っているのですね。
まあそんなわけで、お金カツカツの自分にはこんな囁きが聞こえました…。
そうですねぇ。今は囁きに屈します💖

