ノギンの泡沫投資日記

もうすぐ還暦、年間配当140万…。資産運用を強い味方と頼りつつ、有期契約との併走で頑張るブログ。

株主優待の「学術的な研究」に期待したけど、批判的に読むことになった話

カバー

株主優待は結局、アリなのかナシなのか?

この話題は、諸説あれど結局はウヤムヤにされて「アリと思うならアリでしょ」で終わる…
と、適当に思っていたらそうでもなかったようで。

2025年4月15日、「株主優待の意義に関する研究会」という所が約半年の研究期間の後、まじめな報告書を公開したそうです。

へぇええ~!

何が書いてあるのかな?
偏差ありあり、百鬼夜行じみた優待界隈にどのような研究がされたのか、興味があります。




報告書の主催者と目次はこんな感じ

研究会を立ち上げていたのは、日本証券業協会。国内最大の自主規制機関として、投資家保護につながる自主規制ルールの制定や啓発などを担います。

ここが昨年の 2024年10月、「株主優待の意義に関する研究会」を設置します。
座長は野村総研、5名の委員は複数の大学・大学院や公益財団法人出身という構成でした。

今般、株主優待の意義や効果等について、株主優待を取り巻くステークホルダーのそれぞれの視点及び学術的な観点からの研究・検討を行い、対外的に発信・訴求することを目的として、「株主優待の意義に関する研究会」を設置いたしました。

下記は、報告書 の目次です。

報告書は全体版(38p)と概要版(8p)がありまして、忙しい人はビジュアルな概要版を読めば、株主優待への肯定的な見方が強化されるでしょう。

そう。この報告書は「優待は良いぞ」と結論しているのでした。

ただ、当ブログがそれを称えているかどうかは…
お暇でしたら少々おつきあいください。

ちょっと意外に思える研究結果は… 解像度が低い感?

結論に至る材料は、各種統計と思われる数値の他、全体版の図版原典によれば「『知って得する株主優待』の掲載企業を対象とした野村IRによるアンケート調査」の結果が数多く採用されています。

なんか、この時点でちょっとバイアスを感じるんですが…。
1~3章で優待の歴史、優待実施企業数、個人投資家の年齢や売買割合などのデータが紹介された後、「4.株主優待がもたらす効果について」に話が進むと、その効果は「メリット」と言い換えられて列挙されます。
そうした列挙のなかには、意外に思える内容もありました。

① 株主数の増加
まあ、これはそのままですが。

ボラティリティの低下
これは意外でした。人気優待の権利日前後や、優待拡充・改悪の直後には注意すべきボラティリティがあると思っていましたよ。

で、その分析はどういう捉え方かというと…。

「株主優待の意義」より
概要版 P.5 より

「プライム」や「○○億円以下」という枠で銘柄をガサッとひっくくって、それの「90日ボラティリティ」を見ると低かった、という捉え方でした。

「90日」とはいつからいつまでのことでしょうか?
報告中のデータ日付は「2024年9月末時点」とあるので、9月末までの90日間かな。

うーん。これだと、3月権利も、6月権利もおしなべて「プライム」等へ集約し、優待特有の個別ボラティリティを潰したうえで、夏枯れ期間を含む大人しい3ヵ月を取り出したように思えます。そこで有意な差があったから「これが優待の効果です」というのも一つの見方ですが、それって「研究」なんでしょうか。

優待投資の経験者なら、「他の期間とも比較しよう」とも思うんじゃないかな。

③ バリュエーションの上昇
分析では「バリュエーション」の指標としてPERのみが提示され、上と同様に「プライム」や「○○億円以下」でガサッとまとめたら高かった、これが優待の効果です、という切り口でした。
さすがにそれは乱暴というか、結果と原因と優良企業と普通企業を混ぜすぎな気も…。

しかし、更に驚いたのはこの後の一文でした。

株主優待制度への理解が十分ではないことから、株主優待を批判する人たちは、株主優待のコストは他の株主還元策(自社株買い、配当)に比べて極めて低いことや、株主優待は日本だけのものではなく海外にも存在するという事実を見逃しているのではないか。

「株主優待の意義」より
全体版 P.20 より

株主優待のコストは(他の株主還元策に比べて)極めて低いと主張するグラフ…。

いや、その図面ちょっと待って。
何を合計してるの?

超巨大企業の配当や自社株買いと、そうでない企業の配当優待を全部混ぜて足して比較したら、そりゃーこんな結果かもしれませんけど。コストを比較させる図面としてそれはおかしい。異なる企業を足してどうするんだよ…。

比較するなら、こういう図面じゃないと困りますー。

  • 各企業が利益の何割を配当し、何割を優待したかの平均・中央と散らばり

無配や爆優待、優良優待の企業群が散らばりのどこにいるか、知りたいですよね?
コストが負担で優待を改悪・廃止した企業は実際どんな負担率だったか、知りたいですよね?

でも、そんな数字は企業の内部にしか無く、到底データ化などできないでしょう。だからこそ今まで優待の話はウヤムヤだったし、この資料でも胡散臭いままだった…と感じます。

結ばれた結論は「よく聞く話」で終わったけど…

報告書の概要版はこんな文言で締められています。

株式の大衆化、一億総株主化を図るうえでも、株主優待はその一助となりえるものと考えられ、株主優待の活用の更なる進展を通じて、個人投資家の増加や企業価値の向上といった好循環を生み出し、ひいては株式市場の全体的な発展につながるとも考えられる。

…お、おう。
そうね。良かったね。
しかし何か「お手盛り」を感じるのは自分だけでしょうか 🙄

戦略的に突如現れ、短期で消える爆優待にも同じ事が言えるの?
優待によってのみ上場基準を保つ会社は、市場を発展させているの?

ねえどうなの?

・・・・。

実はこのブログ、最初に新聞記事で概略を読んだ後、改めて報告を辿りながら書いていました。
研究会の出した結論に驚きつつも納得する「へぇ~」な記事を書きたかったんですが、自分で読んでみた感想がイマイチだったため、ブログのトーンも変わってしまいました。

何か、迫ってない気がして不納得なんですよねぇ。

だって、平均は平均だし、合計は合計だもんね。
アンケートを実施し、優待総額やPERの平均上昇率を並べて「こんな傾向です」と言うのが考察ならば、大変失礼ながら半年間かけなくても、研究会の頭脳でなくても良いわけで…。いやマジで。

優待投資をあえて続ける個人の実感からすると、研究会の出番はこんなやつだと思うのです。

  • 未発見の問題や価値を発見する
  • 問題の原因・課題を洞察する
  • 実務機関による課題解決を、データで支援する

株主優待なら、平均値と偏差を研究して課題を発見するとか。
偏差の影響や構造を踏まえて、優待の意義を捉えなおすとか。
そういうやつで、更に査読があったなら、ギャー凄いへぇぇぇぇって叫ぶんだけどなぁ。

今回の研究会は、そういう地点を目指してはいなかったようで。
やっぱり、優待の扱いは「アリと思うならアリでしょ」の地点から変わってない気がしますよ。




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