個別株NISAの醍醐味は、増配と値上がりが実現するときに現れます。
インカムゲインの利回りは増大し、含み益には企業価値の向上が現れたと思えば、投資が報われた満足感を感じますね。あとは、老後を迎えるまでそのまま放っておけば安全圏…。
しかし、そんな満足感から追い落とされる投資対象もあります。
「旧NISA」といわれる、2023年以前の一般NISA制度で購入した個別株達です。
2027年まで続く、旧NISA乗換のフローチャート
旧NISAの制度は保有期間が時限制で、保有5年を経過すれば原則、課税口座へ押し出される仕組みです。例外はありましたが、旧NISA制度は2023年で終了したので、さきの「原則」の部分は今や例外なしの「絶対」に変化しています。
非課税のうちに売却するか、押し出されるまま課税されるか。
自分を含め、旧NISAの個別株を年々活用していた方は、過去年の購入分が5年経過を迎えるたび(つまり毎年順繰りに)、こんなフローチャートを繰り返すのではないでしょうか。

このチャートのうち、真ん中の検討が結構難しいのです。
- 今後も値上がり・増配が続くだろうか
- 現時価での利回りも、期待値以上だろうか
知らんがな、というのはさておいて。
この検討は、「その銘柄を持ち続けるか」というお題を、投資効果の観点で分岐させたものですが、人の心情というのは困ったことに、分岐の通りにはなりづらいものです。
「信用している」「持ち続けたい」「放っておきたい」というバイアス的な気分は、ときに実際の投資効果予想を裏切ってしまうのですね。
自分の場合は「株主優待」という要素も加わるので、更に判断が鈍ります。
面倒くさ… いや、悩ましいです。
この悩ましさは、旧NISAの最終年である2023年購入分が5年目を迎える2027年まで続きます。
今年、旧NISAから売却離脱しようと思った銘柄
旧NISAで2025年に非課税最終となるのは、2021年の取得分です。
この5年間はコロナ終了後、なんだかんだで相当株価が上がりましたので、旧NISAの5年間は良いものだったんじゃないかな、と思います。
優待込みで取得した TAKARA&Company(7921)もそのひとつで、株主優待が途中で廃止されても株価は 1,000円超の成長で含み益、配当は連続増配で今年の予想は 90円と、自分としては全く文句ない状況でした。
旧NISAが終了でなければ放置対象でしたが、仕方ありません。
先程のチャートで、問題の難しい部分を検討すると…。
値上がりに伴い、現時価での配当利回りが低下していました。
個別株長期保有の個人的な投資基準は、配当利回り 3.5%以上を標準検討ラインとしており、実際の新規取得では 3.7~4%超えを狙うことが多いです。
別銘柄の5年後のほうが良い結果かもしれないんだな。
もちろん、瞬間的な利回りには「成長期待」「増配」という観点が含まれません。
売って後悔! というパターンを充分考えつつも、この銘柄に関しては指数を含め、別の道を探す予定にしました。
旧NISA終了を契機に、放置銘柄の時価を捉え直すことができたので、なんだかんだで良いキッカケだったかな、と捉えています。
投資額に対する利回りか、時価に対する利回りか
含み益は、大きければ勿論嬉しいものですが、ときには呪縛にもなります。
含み益や買値利回りを重視するうちに、「現時価に対する運用益は十分か?」という視点が忘れられてしまい、結果的に投資効果を損ねては残念ですね。
我々に素晴らしい恩恵をくださるNISA。
そこで個別株を持つ場合はやはり、「時価は成熟し、いつかは指数に劣後する(かも)」というリスクを踏まえておくのが良いでしょう。
日々の生活をしながら、リスクが顕在化したかの判定。
顕在化したら、銘柄を入れ替えるかどうかの判断。
現状維持のバイアスに負けず、行動を取れるでしょうか…?
そして、その行動は5年後でも正しかったでしょうか…?
運用期間を長く取れる若い方ほど、投資対象の選択は後々の影響が大きいように思います。


