円建ての社債が現れたら買いたい、と思っていたんです。
求めるのは利回りではなく、定期預金からの預け替え。
預金の元本確保性は損なわず、為替リスクもなく、それでいてもう少し利率のよい運用先を持ちたい…。
そんなことを考えていたときに現れたのが「楽天モバイル債」でした。
表面の情報は良くみえた
比較として、既に募集の終わったイオンモールの「ハピネスモール債」は5年で 0.49%。
それと同じ社債間限定同順位特約がついて、期間はそれより短い3年で、0.72%。
格付もAがついているし、今の時期としては良いんじゃないかな?
そう思って、目論見書を見る前から申込む気を高めていたんですが。
借入資金の用途リスク
いざ目論見書を入手し、呼んでみて目が止まったのがこれ。
こういうことを言っていますね。
- 調達結果のうち400億を、既存債権の償還金にあてる。
- 残りのお金を、「楽天モバイル」の運転資金にあてる。
まず最初の400億円というのは、償還金のうちどの程度かというと…
ぜ、全額 😨
つまり、償還するお金がなくて一般人から借りるのか…!
ということはですよ。この債券を償還するときには…
- 経営が改善してお金があるので、償還できる。
- 経営が今と同じでお金がないので、債券を発行してお金を調達する。
このどちらかですよね。
そしてもし、3年後が後者だった場合、再び発行する債券は全額売れてくれるのか。
もし、買い手が不足して償還金が集まらなかったら…
銀行からの融資も厳しかったら…
そんな心配が出ないでしょうか。
次に残りのお金の件ですが、目的が運転資金というのが気になります。
設備を拡充するとか、突発のお金ではなく、運転資金…「日々必要なお金」を借りて作ると言っているのですね。
大丈夫なのでしょうか…。
これは、楽天モバイルを含む楽天グループがこれから儲かってゆくのかという信用の話でもありますが、外から見極めるのは難しいです。
見る目がないと、個々のニュースに印象だけで反応してしまいます(自分がそう)。
では、スキルが無い人は他に何を参考にするかというと、与信の指標があります。
最初に出てきた格付けAとか、そういうものが与信度を反映するとみなして検討するのです。
楽天グループの与信リスク1:JCRは「A」
募集要項で債券の格付けは「JCR A」とありました。
これは日本格付研究所というところが、楽天グループという発行体を下記のように評価したものです。
長期は1年超、短期は1年以内で、A および J-1 は両方とも「債務履行の確実性が高い」です。
Aの方向性「ネガティブ」は、「今後格下げの方向で見直される可能性が高い」という記載だそうです。
一口にAといっても、低い方のAということですね。
楽天グループの与信リスク2:S&Pは「BB+」
一方、別の格付会社であるS&Pでは、楽天グループの格付は下記になっていました。
自動縮小で見づらいですが、「BB+」の表記です。
BB+ というのは「非投資適格」なんだそうで…。
そしてネガティブ記載ということで、今後もし1段階下がった場合は「投機的」になります。
「投機的」格付からの債券はジャンク債などと呼ばれ、高い金利を付さなければなりません。
これは要するに、評価が低いという位置づけのようですね。
リスクに相応する金利の検討
二つの格付会社が異なった評価をしているのは悩ましいです。
ですが、少なくとも信用十二分というわけではないらしいことを踏まえると、楽天グループからの債券にはどれくらいの金利がふさわしいのでしょうか。
決まった基準があるわけではないので、似た格付の例をとって比べてみます。
低い方をつけているS&Pの基準で見てみると…
格付 | 発行体 | サンプル | 金利 |
---|---|---|---|
BBB | イオンモール | 第30回無担保社債 5年 (ハピネスモール債) |
0.49% |
BB+ | 楽天グループ | 第21回無担保社債 3年 (楽天モバイル債) |
0.72% |
BB+ | ソフトバンクグループ | 第56回無担保普通社債 7年 | 1.38% |
比べづらい💦
似た条件の債券がうまく探せません。
BB以下からの円建債券となるともっと探せませんでした。
例が少ないですが、同じ格付のソフトバンクグループと比較すると、なんとなく。
「もっと利率が高くてもよいのでは」
という感覚にはなります。
うーん… 片方の格付は投資適格と出しているけど…。
資金の用途がアレで、楽天モバイルの今もコレで…。
でも、普通はまさか償還できないなんてことは…。
もう少し利率が高ければ…いや…。
……。
やっぱやめた。
振り返り
今回、楽天グループに別の格付がついていることを知ったのは偶然でした。
やはり同じように検討していた他ブログの方が、クロスチェックをされていたのです。
それまでは、目論見書も資金の用途もそこそこに「まあ大丈夫なんだろう」と軽く捉えて、購入する気満々だったりしました。
預金を債券に移動させたい気持ちが勝っていたのです。
しかし、情報を辿ると「ここで自己責任を発動してよいのか?」と疑問が生まれ、気が変わりました。
今回はお金の移動はなく、預金金利もそのままになりましたが、自分としては良かったです。
金融商品の購入時は、単純に信用だけで決めず、また自分の欲しい気持ちを補強するだけでもなく、不安な情報も目に入れたうえで気分良く購入するのが一番だと思い直した話でした。